ゲーム「Clair Obscur: Expedition 33」(クレールオブスキュール:エクスペディション33)のストーリー考察です。
今回は「33」の数字の謎に迫ります。
ストーリークリア(あるいは収集物の完全達成)を前提としているので、ネタバレに注意して下さい。
“33”への強いこだわり
作中ではレコードの総数が33枚だったり、墓標の日付がが12月33日だったり、遠征隊33だったり、武器の最大レベルが33だったりと、「33」という数字に強いこだわりを感じられます。

今回は、この”33″という数字の理由、なぜ”33″なのか、その由来について探ってみます。
根拠として強そうな”33″
“33”の真意に迫るため、今回は”33″という数字に関わる、ゲームと関連していそうな事柄について調べて回ってきました。
以下、自分が有力と感じた”33″です。
フランスの国際番号は33
フランスへ電話をかける際に必要な国際電話番号は”33″です。(国番号一覧 | 海外へかける(au国際電話サービス)
「ゲームの舞台はフランス・パリ」である事や「フランス産のRPGであることをPRしている点」から“33”は間違いなく”フランス”を意味する数字です。

Love 𝓕𝓻𝓪𝓷𝓬𝓮
開発元のSandfall Interactiveのトップページには下記の記載があり、自分たちがフランスの開発チームである点を強調しています。
Who we are
(私達は誰か)Founded in 2020 in France, Sandfall Interactive is a video game studio developing premium 3D games for PC and new gen consoles.
(2020年、フランスで設立されたSandfall Interativeは新世代向けコンソール機とPC向けにハイクォリティな3Dゲームを開発するゲームスタジオです。
https://www.sandfall.co/より引用、翻訳
一番最初に入る1行目の文章は、一番のセールスポイントです。
基本は「素敵な体験を、あなたに。」みたいな、企業理念や商品の説明が1行目に置くはずです。
例えばUBI softのabout usでは企業理念が1行目です。
知っているゲーム開発スタジオの公式サイトを覗いてみて欲しいのですが、いわいる「About us」の1行目で自分たちの設立年や国籍を記載するのは珍しいです。
つまり、開発元は自分たちが“フランスの”スタジオであることを強調したい(ブランド化や国内のゲーム開発の活性化のため?)という意図と汲めます。
開発人数が33人
このゲームの開発は33人(と1匹)で行われたとされています。
このことはSandfall Interactive(開発元)の制作スタッフのページで確認できます。(2025/5/13時点で33名+1匹)

とある開発会社から独立した精鋭集団という経緯があるため、制作スタッフは自分たちが33人の少数精鋭であることを誇りに思っているでしょう。
この点から、この33人は、”33″の根拠たりえると思います。
反対意見として
スタッフクレジットには大量の人物が載っているため、実際には多くの部分を外注しているようです。(~400人?)
どこからどこまでを「制作スタッフ」とするかはかなり難しい問題でもありますが、”制作人数33人”は無理やり気味の、マーケティング用の数字と取れるかもしれません。
まとめ:「33」は「俺達」
「何か象徴的な数字を登場させる必要があるんだけど何にしよう?」

「“33”っしょ。フランスだし俺達の人数と一緒だし!」「いいねそれ!」

他の”33″についても調べましたが(後項参照)、他はこの2説ほど強い根拠にはならないので、総括としてはこの説を推します。
“33”の意味合いとしては「新進気鋭なフランスのゲーム制作スタジオ、俺達の勝負の作品!」といった感じでしょうか。
想像の域は出ませんが、”フランスの有力なスタジオになる”という設立目的や、”フランスが舞台のゲームを作る”事も決まっていて、何人の開発体制になるかはあらかた検討が付いていたと予想できるので、象徴的な数字として”33″を登場させることは開発のかなり初期で決まっていたと予想します。
そこから数字を印象的なものにするために、様々な場所に”33″を使ったのでしょう。
もしかしたら数字を33にするために開発者ページから”抹消”された社員もいたかもしれません。
(お給料や契約内容は一緒だが開発メンバーとしてページに載せられていないとか。)
制作スタッフから直接語られない限り解答は得られませんが、今回の結論としてはこの説、“Expedition33はSandfall interactiveであり、フランスを推しておきます。
以下、調べてきたその他の”33″について掲載しています。
その他の”33″
ここでは調べはしたものの、根拠として弱いと感じ、上記の結論から漏れた”33″について掲載します。
ダンテの「神曲」
詩人「ダンテ・アリギエーリ」の代表作とされる叙事詩「神曲」は地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部からなっており、序章1歌+地獄篇33歌、煉獄篇33歌、天国篇33歌で、合計100歌という構成になっています。
※ 叙事詩 = 吟遊詩人が語る、英雄の冒険や神話的な出来事を語る長い詩。スカイリムの詩人が歌うやつという認識で大体OK
物語のあらすじを見る限り本作のストーリーと共通する部分があるように感じます。
ダンテ「神曲」の超ざっくりしたあらすじ
ものすごくざっくりと物語を要約します。
「知らない世界に迷い込み、真実を知り、最後に愛こそが全ての原動力ということを知る」という点は一致しているかと思います。
ちょっとこじつけ臭いのは否めないですが、開発初期で”33″という数字だけが決まっていたのなら、ストーリーを考える段階で”33″からダンテの「神曲」にインスピレーションを得たという説はありえるかなと思います。
作家の間では有名な作品なので、ストーリーライターが「神曲」に触れていた可能性も高いでしょう。
ものすごくこじつけ臭くなってしまいますが、我々が現実世界だと思っていた世界ですらキャンバスの世界であるならば、「3つの世界」という点も共通点たりえるかもしれません。
レコードの周波数が33rpm
一般的に流通しているレコードは33rpm(1分間に33回転)です。(Wikipedia)
ゲーム内で集められるレコードの総数は33個なので一致しています。
サウンドトラックには100曲以上収録されており、いくらでもレコードを増やせたはずなので、これは偶然の一致ではないでしょう。
しかし、33rpmの規格になったのは1950年ごろ、アメリカの規格会社によるものです。
それ以前のレコードは78rpmが主流であり、1900年ごろを舞台にしたフランスの物語、音楽とはそれほど関わりない物語の内容を考えると、「レコードの総数どうしようかなあ…せや!」はありそうですが、「ゲームに使う象徴的な数字どうしようかなあ…せや!」は弱いと思います。
また、45rpmのレコードも存在するため、「レコードの数を増やしたいなあ…せや!」となった場合は45個になるかもしれません。DLCとかで。
Sandfall Interactive(開発元)の住所
残念章です。
フランスの各県には県番号というものが振られています。
つまり、開発元のSanftall Interactiveのスタジオ所在地の県番号が33なのではないかという説です。
調べたところ、公式サイトではSandfall Interactiveの所在地は「28 avenue de Lodève – 34000 Montpellier (France)」となっていました。(Mentions|legals|sandfall interactive)
この住所について調べたところ、開発元の住所はエロー県、県番号は34でした。
近いですが33には1に足りません。
ちなみに33番はジロンド県というらしいです。
オック語(ゲーム内の歌の言語)が使われている理由
ゲーム内の歌には古いラテン語やオック語、あるいはそれらをもじった架空言語が使われているものがあります。
※ オック語 = 今は話者が少ないがかつて南フランスで広く使われた言語。日本でのアイヌ語や琉球語みたいな感じ。
エロー県はフランス南部に位置しているため、作中の多くの歌にオック語が登場するのはこのためかもしれません。
イエス・キリストが死亡した年齢
聖人イエス・キリストは33歳で死亡したという説があります。
そのため、「33」に大きな意味があるとする宗教もあるようです。
また、そういった宗教では基本的に33は良い数字とされているようです。
3という数字も宗教的に重要なようで、ダンテの「神曲」で3が頻出するのもこのためです。(三位一体)
Expedition33が宗教的なテーマの物語であれば元ネタたりえそうですが、ゲームのテーマ的にはそういう事は語られないので、この説は弱いかなと思います。
“ゲン担ぎとして”みたいな、理由の一部にはなっているかもしれません。
家族愛や人間の苦悩がテーマなので広義では宗教的かもしれません。また、「上位存在」や「神」の存在を示唆すると考えるならいけますし、「無償の愛」=「自己犠牲」と解釈するのなら、33は確かにヴェルソの数字です。ちょっと無理やりかも。
数占いの「33」
一部の数占い(数秘術)では、「33」は非常に縁起の良い数字とされているそうです。
スピリチュアルな事は苦手なので詳しくは掲載しませんが、googleの検索結果をリンクしておきます。
この「33」はキリストの没年に関係しているようなので意味合いとしては上と同じかもしれません。
33export
“33 Export”というビールが1960年からフランスで販売されているようです。
リンク(wikipedia):https://fr.wikipedia.org/wiki/33_Export

容量が33cl(=330ミリリットル)であった事が名前の由来だそうです。
日本では購入できませんが、ビール評判サイトを閲覧すると現在でも存在する銘柄のようです。
“ライターがこのビールを愛飲していた”説、間接的な関わり説はアリかもしれませんが、直接的な要因ではないでしょう。
(おまけ)本当にあったかもしれない飲み会開発会議
主人公の最強技「スタンダール」って言うんだけどダメージ倍率どうしよう?

隅にあるワイン(750ml)がチラッと目に入る

うーん、750%!

こういうのはわりとよくあるらしいです。現在は25倍(250%)に弱体化されました。
フランスのことわざの「12月33日」
web上で有力な根拠は見つけられませんでしたが、フランス語話者によると古いフランスの言葉で「12月33日」は「絶対に起こらないこと」を意味するそうです。
エンディングの墓標に刻まれた「12月33日」は嘘を意味する「ヴェルソ」とも取れますし、「この世界も現実じゃない」とも取れます。
脊椎の脛骨の数
成人の脊椎は、首から骨盤まで通常33個の椎骨から成り立っています。
https://s-shinaikai.jp/media/show/より

キャンバスの世界地図 = 人体説 みたいなのに使えるかもしれません。
更に弱い”33″
好みの33を探して君もこじつけ男になろう!
ということで、wikipediaの「33」からありったけのそれっぽいものをリストアップします。
リンク:33 | Wikipedia
- 純太陰暦(1年=約354日)では、端数部分を除いて、閏による補正を行わないために、毎年11日早まるので、33年で季節が一巡する。
- しし座流星群は33年周期で大出現する。
- 年始から数えて33日目に当てはまるのは、2月2日。
- 原子番号33番の元素はヒ素 (As)。
- インド発祥のヴェーダの宗教においては、33は聖数とされる。
2月2日は年始から33日(年末まで332日、閏年なら年末まで333日)
上記でちょっとおもしろいと思ったので取り上げます。
ヴェルソの墓標には1879年2月22日と刻まれており2月2日とは2のゾロ目という点が似ています。
2月2日ならきれいに年始から33日のはずが、わざわざ2月22日にしたということになるので、何れかの意味があると感じざるを得ないでしょう。
2月22日は年始から53日なので、53という数字に興味を持たれた方はこの調査について引き継いでみて下さい。

おわりに
今回はゲーム内に頻出する33という数字に意味があるのではないかという推測をし、命名理由になっていそうな”33″について調べてみました。
結果としてはゲームの売り出し方的に、「フランス国際番号が33」と「開発チームの人数が33」という説が最も強い根拠になりそうです。
その他の”33″については上の理由ほど強くないですが、”33″に決定する補助的な理由にはなったかもしれません。
ゲーム内ではこれでもかというほど物語のヒントが散りばめられていますが、物語的にはフランスを示唆する「33」もその一つだったということになります。
ここが私のアイデアの限界ですが、文化の違う国ではまた別のアイデアがあるかもしれません。
他、何か面白そうな”33″があれば是非ご共有下さい。
妄想話:日本のゲームだったら遠征隊81
我らが日本の国際番号は81なので、日本のゲームだった場合はモノリス歴97年にマエルが産まれ、1年後に抹消を控えた隊員達、80歳のギュスターヴと旅をすることになります。
(そして80歳のルネとシエル。志願でも入隊できるので32でも通用しそうですが)
ゲーム内では遠征隊60の死因が抹消、70が抹消を間近に控えていたようなので、80歳の冒険も不可能ではないかもしれません。
親戚の集まりで90のお爺ちゃんが6歳のひ孫をかるたで泣かせていたのを見ると遠征隊10とかよりは強そうです。
ヴェルソがルノワールの息子であることが明かされ、アクソンの心臓から結界破りの武器を作れる事が判明するのは遠征隊58のログなので、ストーリー的にはかなり難しくなってしまいますね。
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